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お酒のお供

お酒を飲みながら読んだら確実に悪酔いします。

赤面しつつ…

フィクション

今日はバレンタインデー。皆さんはいかがお過ごしですか。胸キュンの一日を送られることを祈っております。

 

さて、話は変わりまして。高校一年生のときに、たまたま同じ曜日に部活がOFFだった男女4人組で、毎週の放課後に他愛ないことを話していました。そんなある日、メンバーの一人だった女の子からの提案により、「4人の中で一番胸キュンする物語を書いた人が勝ち」というゲームが行われたのです。制限時間は30分。4人でニヤニヤしながら書いたのを覚えています。

そんなことなどすっかり忘れていた先日、高校時代のものを整理していたところ、その原稿を見つけました。ノートの最後から2ページ目に手書きで書かれた物語です。題名は『冬の春風』。懐かしさに襲われまして、赤面しつつ全文を掲載します。人肌恋しい気持ちで書いたようで、読んでいるこちらが恥ずかしくなるほどのピュアなラブストーリーです…。

 

『冬の春風』

真っ白な空から降りてきた雪の結晶が、街路樹の枝に当たって静かに融けていった。人が通った跡をわずかに残して厚く積もった白い歩道を歩きながら、マフラーを顎まで引き上げた。二月の風が音も立てずにビルの間を吹き抜けていく。

真っ直ぐに続くその広い通りは、まるで永遠に続いて空に繋がるのではないかと思えるほどに景色に溶け込んでいる。その神秘的な世界に見とれて通りすぎてしまった交差点まで引き返して、僕は小さな洋菓子店に入った。慣れない甘い香りに包まれつつ、シナモンクッキーを指差す。微笑みながら包装してくれる店員の手元を見るともなしに見ていると、こちらまで穏やかな気持ちになれた。白く細い指がきれいだった。

店を出てからの道はあまり覚えていない。今となって思い出せるのは、公園のベンチに身を縮こめながら座る君の姿を見つけた瞬間から後のことだけだ。

君は今も覚えているだろうか。

「来てくれてありがとう」と言いながら僕に差し出した紙袋は、どこかで見覚えのあるデザインだった。君は照れ隠しをするように、「うすうす気づいてたとは思うけど…好きです」と呟いた。

その返事の代わりに僕が君の小さな手に引っ掛けたのは、君が僕にくれたのと同じ紙袋だった。

「返したんじゃないよ。この公園に来る前に、大通りの店で買ってきたんだ。シナモンクッキー、好きだって言ってたよね?」

戸惑う君をいとおしく思いながら、僕は続けた。

「バレンタインデーに、自分が相手のことを『好きだ』っていう気持ちを伝えられるのが女の子だけなんてずるいと思ってる。海外と同じように、男からだっていいじゃないか。これは、僕から君へのバレンタインプレゼントなんだ」

頬を赤らめた君は、それまでに見たことのない表情をしていた。そして君は突然僕を上目遣いに見つめて、「私も…シナモンクッキーを買ってきちゃった」と笑ったのだった。

いつしか雪は止んで、暖かな空気が僕たちを包んでいた。

 

ひゃー。バレンタインデーだから載せてはみたものの、やはり他人に見せるようなものじゃないですね、これは。お恥ずかしい限りです。

ちなみに、ここで他の3人におだてられた私は、翌年に『いちご』という短編恋愛小説を密かに書き、それから数年温めて、昨年完成させたわけですが、これは取り敢えず今回はおいておきましょう。

 

それでは。

 

(今年のバレンタインデーも孤独だったか…何年目だ、この孤独…。)