読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

お酒のお供

お酒を飲みながら読んだら確実に悪酔いします。

僕から私へ、私から君へ

Penの日常

去年の中頃から、これまでの学校生活の思い出の品を断続的に整理しています。社会人になるにあたって、一つの区切りをつけるためです。

先日、小学校時代に私が学校で作った数々の作品(?)の中から、とある手紙が出てきました。封筒に書かれている宛名は「20才の僕」。どうやら、小学4年生のときの『2分の1成人式』の一環で書いた、未来の自分への手紙のようです。既に20歳を2年も通り越してしまいましたが、10歳の頃の「僕」に返信しようと思います。

まずは「僕」からの手紙の全文です。

20才の僕へ

10才の僕を覚えていますか? 僕は0才の時の僕を全く覚えていません。同じ10年がたって、20才の僕は10才の僕のことを覚えていないかもしれません。

僕は楽しく学校に通っています。転校生の○○くんと仲良くなりました。もちろん××くんと□□くんも、いっしょに遊んでいます。3人が20才になったときのことを想像できません。みんなは今、どうしていますか?

他にも質問があります。中学校、高校はどうでしたか? 楽しかったですか? 大学って、どんなところですか? 僕は今、宇宙飛行士になりたいと思っていますが、20才の僕も同じですか? 結こん(※結婚)は、しようと思っていますか? 毎日、楽しいですか? 実は今、イラクで戦争が起こっています。10年後は平和ですか?

20才は大人ですね。早く大人になりたいです。お元気で。

10才の僕より

 

10歳の君へ

まずは、お返事が2年も遅れてしまったことを謝ります。だからといって、今となってはその遅れを取り戻すことはできませんから、20歳の私に代わって22歳の私が答えることにしますね。

10歳の頃の君のことを、私はよく覚えています。でも、ここでアレコレと列挙するのは止めておきます。10歳の君が今一番新鮮に体感していることを、私が懐かしむように話すのはおかしいことですからね。君はこれからも一生懸命に生活すればよいのです。

それよりも、君がまだ知らないことを少し教えてあげましょう。君自身も知りたがっていることですしね。小学校中学年の君にはまだ少し早い話もあるかもしれませんが、心のどこかに置いてくれれば幸いです。

学校は、毎日とても楽しいところですよ。とても楽しいからこそ、知らない方が良いのだと思います。ですから、詳しく話さないでおきましょう。予測のつかない毎日を、全力で楽しむのが学校生活であり、青春です。今の君が、小学生としての生活を送っているのと同じように、これからもずっと前だけを見ていけば、毎日が輝いて見えてくるはずです。躊躇はしてはいけません。君は、今後の学校生活で、いくつもの挑戦を続けていくことになります。決してためらわないこと。自分の信じた道を進んで損をすることはありません。そうやって君のこれからの人生を歩いてきた私が保証します。

今の君の将来の夢は宇宙飛行士。確かにそうだったと思い出しました。君はそこから始まる様々な夢を次々に追い求めていきます。その中には大きな夢も小さな目標もたくさんあります。もうすぐ社会人になる今になって実感していますが、夢を持つことはとても大事なことでした。将来の君がずっと未来への希望を捨てなかったからこそ、今の私はここにいます。どこかの時点で「まあいいか」と何かを諦めてしまったとしたら、私は私ではない存在だったことでしょう。

今の私にも、もちろん夢があります。他の人から見たら、それはとても小さな小さな夢かもしれません。でも、必ず実現させるつもりでいます。きっと今の君に言ったとしても、納得してくれるはずです。君と私を繋ぐ12年の時を超えても心の中に確かに留まり続け、そして今後の何十年間も消えることはないであろう一つの信念から生まれた夢です。だから安心して、これからも希望を持ち続けてください。

ところで、「結こん」と書くとき、照れくさくありませんでしたか。中学校に通っている頃まで、結婚という言葉がどことなく大人の言葉のように思えてしまって、口に出したりするのが気恥ずかしかったように覚えています。でも、この歳になって分かってきました。結婚ということに何も恥ずかしいことなんてありません。とても自然で、ひととして大切な出来事なのではないかと思います。私は結婚をしたいと考えていますよ。

誰かを好きになることは当然のことです。それと同時に、辛いことでもあります。自分の思いが先走ってしまって、不必要に妬いてしまったり、誰かを喜ばせようとする気持ちが自分の胸を苦しめたりしてしまいます。10歳の君にはまだ分からないでしょう。それでも、ふと気付く時がいつか必ず来ます。自分の「会いたい」「話したい」を押し付けるのではなく、相手を喜ばせたい、幸せにしたいと思う気持ちが心を包み込むのです。その思いが二人重なったら、素敵なことだと思いませんか。結婚に対する考え方は人それぞれですが、私はそれこそが結婚だと思うのです。

それから、今の世界が気になるのですよね。残念ながら、やはり平和とは言えません。イラク戦争は私が高校に入るまで続きました。今でも武力衝突はあちこちで起きていますし、あらゆる争いは絶えません。人間の心が貧しすぎるのです。自分(の国)さえ良ければそれでいい、という考え方に急速に傾きつつあります。それは国際的な話だけではありません。身の周りを見渡しても、自分本位の人が増えてきているように感じます。いかに自分が他人よりも優れているかということを生き甲斐にしている人が、憚りなくそれを主張する世の中です。これは、お金を持っていない人、いわば物質的に貧しい人が、自分の身一つで生きていくのとは話が違います。心が貧しくなると、ひとはただ自分勝手に生きていこうとしてしまうのです。それは私自身もそうかもしれませんし、誰もが当てはまりうることだと思います。人間が豊かで余裕のある心を持つことができるのは、これからどれほど先になるのでしょうね。本当の意味での平和は当分訪れないのではないかという気がします。でも、信念は捨ててはいけません。どんな世界でも私たちは生きていかなくてはならないのです。

そういえば、友だち3人の話をしていませんでしたね。みんなきっと元気ですよ。今は遠く離れたところに住んでいるので、姿を見かけることはありませんが、今でも変わらず明るい3人がどこかで暮らしていると思います。

そして、彼らに加えて、今後君が出会うたくさんの人がいます。時に衝突し、時に信頼しあって、その度に関係は密接になっていきます。ずっと一緒にいたいと思うときもあるでしょう。それでもいつかは離れ離れになるときがあります。しかし、それを「別れ」と考えてはいけないと思います。一つの歯車が違っていれば一生出会わなかったかもしれない彼らです。それなのに、場所が離れただけで「別れる」なんて味気ないと思いませんか。これが今の私の持論です。住む場所は違っても、直接会える機会が期待できなくなっても、関係がぷっつりと切れるものではないはずです。だから、今仲良しの3人はもちろん、これから会う人それぞれを大切にしてください。別れを恐れたり惜しんだりするのではなくて、今の関係を大切にするのです。22歳の私が、10歳の君に言える精一杯のことです。

今の私も、大人になりたいと思っています。

長文失礼しました。

22歳の私より

 

書き終えた今、10歳の私から返事をもらったような気がしました。